東京タワー ~親父たちの挽歌~

最終電車の終わった時間に店を出て
みな別々の帰り途
流しのタクシー そのまま見送り
歩いていると
優しく揺れてる 東京タワー

時間に合わせるように歳を重ねて
自分らしく生きてたつもりが
気づけば何処かの風に さらわれた
今日という日があることを

あいつと朝まで遊んだ街の交差点
もう そこに二人の影はない
テールランプが吸い込まれてゆく
そんな色した 東京タワー

無理矢理覚えた流行りの歌など口ずさみ
「もう若くないさ」と笑いながら
決め込む背広の 馴染んだ姿を映し出す
午前三時の 東京タワー

次の人生なんて期待せずに
今だけを生きてたつもりも
気づけば昔の自分に憧れる
そんな親父になってきた

あいつと帰った青山近くのアパルトマン
もう そこに二人の部屋はない
心で今も秘かに咲いてる
花の色した 東京タワー
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