ひとり舟

流されて 流されて
ビルの谷間の なみだ川
立つ瀬なければ 浮かぶ瀬もない
寄る辺(べ)なくして 今日も又
あゝゝ木(こ)の葉みたいな ひとり舟(ぶね)

倖せは 倖せは
泣けば泣くほど 遠ざかる
やっとつぼみの 夢一輪を
何でかき消す つむじ風
あゝゝどこへ流れる ひとり舟

人の世は 人の世は
嘘と真実(まこと)の 寄せ集め
愛にはぐれて 情けに飢(う)えて
寒さこらえる 夜(よる)の川
あゝゝ春はいつ来る ひとり舟
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