螢篭

あれは十八縁日で
お前が買った螢篭
わが身こがして夏を乞う
哀れにそっと解き放ち
一つはなせば するすると
二つはなせば お前の頬を
かすめて光る恋だった あゝ恋だった

おれが二十才かあの頃は
かすかに光る螢篭
浴衣のお前抱き寄せて
別れをそっと打ちあけた
一つはなせば するすると
二つはなせば お前の頬を
涙が伝う恋だった あゝ恋だった

お前どうしているだろか
遠くに見える螢篭
時のたつまま流されて
故郷すらも帰れない
一つはなせば するすると
二つはなせば お前の頬を
かすめて光る恋だった あゝ恋だった

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