さすらいの唄

「かえるが鳴くから帰るなら、
帰る家のない子にかえるは何て泣くんだろ?
やはりカエローカエローと鳴いてらあ。
帰る家のある子のために鳴いて
帰れなくなっちまったかえるもいるんだろうな」

ある夕方のこと 風が俺らに伝えたさ
この町の果てで あの子が死にかけていると
俺は走った 呼んでみたさ
だけど 俺を呼ぶ声はなかったさ

ある夜のこと 風が俺らに伝えたさ
この町の果てで あの子が死んだと
俺は走った 呼んでみたさ
だけど 俺を待つ墓はなかったさ

それからある時 風が俺らに伝えたさ
この町の果てで あの子が俺を呼んでると
俺は走らぬ 言ってやったさ
それは風の いたずらだと
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