甚八の夢は夜ひらく

好きな啄木 朔太郎
ボストン・バックの隅にいる
どこで縒れたか ドヤ暮らし
夢は夜ひらく

帰る昔が あるのなら
飲んで血なんか 吐きやしない
父なし母なし ろくでなし
明日が遠すぎる

飛んでしまった 瞳の色と
日暮れみたいな 微笑みが
少し怖いと 寄りつかぬ
惚れたあの女

相槌打つのに 困ったか
闘争くずれの 学生(せいがく)が
小便する間に 消えていた
少し情(つれ)ないぜ

俺の心は 鳳仙花
いくつ弾けりゃ 気が済むか
出るは汗かよ 涙かよ
夢はいつひらく

俺を世間が 愛さない
俺にも世間が 愛せない
ひとりぼっちの 流れ星
夢は夜ひらく
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