女の帰郷

手のうちに 残ったものなどないけれど
あなたに逢えて幸せでした
外した指輪 手紙を添えて
書棚に挟んでおきました
これで踏んぎり 着くのでしょうか
あ……心が 心が残る 女の帰郷

母さんに 涙もそろそろ枯れた頃
諦めどきと諭されました
二人が験を担いで買った
枯れない造花のバラの花
何の役にも立たなかったわ
あ……心が 心が残る 女の帰郷

ふるさとに とに角一度は帰らなきゃ
自分がみえず 落ち着きません
西陽が部屋の畳を染める
あなたの帰りを待たないで
顔を合わさず お暇(いとま)するわ
あ……心が 心が残る 女の帰郷
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