鞆の浦情話

瀬戸の島影(しまかげ) 夕日がそめて
恋に身(み)をやく 鞆(とも)の浦(うら)
あきらめますと 出来ない嘘を
云ってしまった 籠の鳥
月の出潮に みだれ泣き

古い町並み 雁木(がんぎ)の波止場
うわさ潮待(しおま)ち 鞆の浦
昔の夢と 打ち捨てたとて
今はその夢 恋しさに
沖へ漕(こ)ぎ出す 捨て小舟(こぶね)

いつか栄えた 北前(きたまえ)船(ぶね)に
泣いた女の 鞆の浦
情けも恋も 限(き)りあるものよ
たった一年 燃えた日の
いのち照らして 常夜(じょうや)燈(とう)
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