還らざる戦友

戦い済んで 三十年
やっと来れたぞ 戦友よ
白い夏雲 蒼い海
波間に散った特攻機 特攻機

緑静かな シャングルに
一きわ高い パイプ山
激戦の跡 そのままに
赤肌見せてそそり立つ そそり立つ

噴煙あげる 天山(てんざん)の
丘に鎮まる 慰霊碑に
故郷(くに)から運んだ 水筒の
水をそそいで俺は泣く 俺は泣く

燃える日差しと この地熱
生きてる希望(のぞみ)は ないけれど
どこかに潜むか わが戦友(とも)よ
早く出て来い逢いに来い 逢いに来い

昼なお暗い 密林の
奥で見つけた 壕ひとつ
錆びた食器と 弾薬の
中に白骨横たわる 横たわる

あゝ玉砕の 硫黄島
どんなに祖国が 恋かしろ
桜の花を 手向けては
言葉もなくてただ涙 ただ涙
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