夏の朝

八月のいちばん高い空から
降りて来る
寂しい笛の音が
消えた方へ誘われて

風と遊ぶ雲のかたちが
君を呼んでる
ただふいに
遠くまで行きたいと思う
夏の朝

どこまでも届く風
終わりのない空を信じて
生まれたばかりの夏
幼い光の小道

君には聞こえない
風の中の歌声
私には見えない
草の中の道しるべ

忍び込んだ知らない庭の
影に溺れて恋をした
優しくて眠たくて
光に溶けるようで

君の知らないことが
書いてあった
蒼い背表紙の
まだ見ぬ本に挟んだ
小さな栞を抜き取って

どこまでも届く風
終わりのない夏を信じて
眩しい朝が始まる
ひかりは生まれたばかり
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