貴方の居る途

闇夜に閉ざした瞼を
包み込む優しい朝
深い眠りから醒めれば
いつも貴方は微笑む

けれど 幻の中に響く鐘の音
誰かが愛した薔薇(はな)の香り
涙を乾かす太陽(ひかり)さえも
心に影を落とす 見えない傷跡に

此処から何処へ向かうのか
振り返れば もう途(みち)は無く
貴方の居る明日(あした)が在ればいいと
ささやかな温もりだけ願う

冷たい氷の籠から
抜け出した一羽の鳥
銀色の月を仰げば
消えゆく夢が仄めく

それは思い出の中で生きる人々の
孤独を隠した雨にも似た
誰もが焦がれる憧憬(しょうけい)へと
心を動かしても潰えぬこの記憶

ひび割れ崩れ落ちてくる
あの空へ羽ばたけるように
正解(こたえ)のない未来を紡ぎ
痛み携えて探しにいく

赦されない罪だとしても
通り過ぎた あの日々を忘れはしない

塗り潰された名前でも
哀しみに濡れた翼でも
貴方と居る明日(あした)へ翔べる
それが ささやかな幸せへの途(みち)
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