丹後雨情

港をぬらして 降り出すしぐれ
やらずの雨なら いいものを
きっと今頃 あのひとの
船は岬の 先の先
あとも追わずに 手酌酒
港 丹後の 別れ雨

私もしょせんは 砂丘の花よ
根下ろすことさえ ままならず
ましてあなたは 旅のひと
いつか譲り寝 その癖も
うれしかったわ 仮りの宿
港 丹後の 別れ雨

みれんは捨てても 傘忘れずに
鏡につぶやく 送り紅
海は時化ぬか 荒らさぬか
どうぞご無事で いて欲しい
女 素顔が 覗く夜
港 丹後の 別れ雨
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