天使の歌う朝

歩道橋の上でカラスが羽を閉じ
この街が白々と動き始める頃
真新しい日が昇るビルの屋上の辺り
一人の天使が座っているのを見た者がいる
天使はいつも歌ってるそうだ
誰かにそれが届くようにと

点滅の信号が赤に変わり それから青に変わる
東向きのショー・ウィンドウのマネキンが輝く
地下の店から放り出された酔っ払いの男
フラフラと歩きながら煙草に火を点け
ふと不思議そうにビルの屋上を見上げ
それから首を振り 歩き出す

交番の前で警官がくしゃみを一つ
非常階段の下で猫があくびを一つ
夜通し遊んで声を枯らした少女が
ドーナツ・ショップから出て来てハミングをする
それが自分でも知らないメロディだと気づき
ほほえみ ビルの屋上の辺りを見上げる

タクシー タクシー トラック またタクシー
デパートの搬入口 車をバックさせてる
男が窓から顔をのぞかせて
ふと耳を澄ます 確かに誰かが
歌ってるのが聞こえたんだが

天使はいつも歌ってるそうだ
誰かにそれが届くようにと
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