サイレン

君の涙が砂にとけた ぐしゃぐしゃな顔で膝をついた
スタンドから見る その顔は 別の人に見えた

「かっこよかったよ」とか「気にしないで」だとか
言えなかったのはきっと 君が特別だから

あともう少し あともう少し
夏よ終わらないで まだ君と夢を見ていたい
雲が遠くに すごく遠くに 背伸びしているよ
サイレンの音 鳴り響く

影が伸びてく校庭で 君は一人で走っていた
誰にも見せない 横顔を 遠くから見ていた

「かっこよかったよ」って どうして言えるんだろう
手のひら握っていた 胸が苦しくて

あともう少し あともう少し
夏よ終わらないで 君の夢を奪わないで
悔し涙も 笑い涙も 泥だらけの日々も
風がさらってどこへ運ぶ?

あともう少し あともう少し
願う夏が終わる 次の季節へ続いてく
君は遠くへ もっと遠くへ 歩き始めるよ
握った手を開き空へ
サイレンの音 鳴り響け
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