北陸本線

海がうなれば カモメが吠える
波は岩場を かきむしる
身を切るような 凍てつく風が
髪を乱して 巻きあげる
あなたどこにも 行かないで
私を置いて 行かないで
北陸本線 胸が啼く

花の盛りを 追い立てるよに
雨が背中に 降りかかる
骨が鳴る程 抱かれた夜も
今じゃ泡沫(うたかた) 夢の夢
せめて一日 遅らせて
心の区切り できるまで
北陸本線 口紅(べに)が啼く

恋のなきがら 捨て切れなくて
後生大事に 抱いている
女ひとりを なぜなぜ泣かす
にじむ漁火 日本海
惚れた分だけ やせていく
心も胸も くちびるも
北陸本線 海が啼く
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