あんぶれら

都会はいつでも悪戯(いたずら)ばかりが満ちて
小指の糸も 時にもつれて
たそがれのにわか雨
見知らぬ二人を寄りそわす
お困りでしょうとうっかり傘さしかけて
不幸なくじを引いてしまった
運命(うんめい)と思うには
あまりにささいな出来事で
あなたが濡(ぬ)れて わたしが濡れて
どちらの肩も びっしょりと
あなたが男 わたしが女
ふとその時に感じてた

レースのカーテン斜めにめくって覗(のぞ)く
季節が春に変わる夜明けを
腹ばいで 吸う煙草
何だか空(むな)しくなりました
テラスにひろげた水玉模様の傘が
春一番の風に吹かれて
笑いたくなるように
くるくるどこかへ消えました
あなたが揺れて わたしが揺れて
出来ごころから まごころへ
あなたが男 わたしが女
あの時あの夜(よ) そうでした

晴れてもいない 降ってもいない
あなたはここに もういない
晴れてもつらい 降ってもつらい
用なし傘は とんで行け
用なし傘は とんで行け
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