月面

月面に今すぐ降り立って僕は手に銀のナイフを
クレーターを切り裂いて君の部屋を覗いた
泣き寝入りしている朝方 酷いやつはいるのさ
爪先を揺らし憂鬱を蹴散らした

真面目に生きてはつまらない夜が
ふいに窓を叩き、夢を連れ出すから思わず後を追う
君は一人じゃ眠れない

壁面にぼんやり突っ立って 君は後ろ手にナイフを
好奇心で月を切り分けて飲み干した
いつでも調子っぱずれの嘘が多い友達
隙を作るたびに君は壊されていく

歯止めの効かない朝はやってくる
寝息より静かに
断れない訳を夢のなかに閉じて、君はそのうち笑い出す

月面を素早く飛び去って君は無重力のなか
爪先を揺らして憂鬱を蹴散らした
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