母恋い三度笠

逢いに戻ろか このまま行こか
伊豆の夜空に 呼子星(よびこぼし)
追われ鴉(がらす)も 祭りの笛に
故郷ふり向く 天城の峠…
なぜに越されぬ なぜに越されぬ 母恋い三度笠

「この峠を越えたら懐かしい故郷(こきょう)が待っている…
今頃おっ母さんはどうしていなさるか…
逢いてえナァ… おっ母さん…」

泣いてさとした あの日の顔が
沖の白帆に 見え隠れ
宿場灯りに 新茶の香り
愚痴(ぐち)は言わぬが 一本刀…
俺も人の子 俺も人の子 母恋い三度笠

無理も道理と 世間は言うが
たぐり寄せたい あの絆
またも一雨 草鞋(わらじ)の紐(ひも)に
しみてせつない 道中しぐれ…
明日(あす)は何処(どこ)やら 明日(あす)は何処(どこ)やら 母恋い三度笠
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