鱗翅目標本

夢を見る真綿の寝床
投影されるのはいつも 見知ったキネマトグラフ
癖のある髪を掠めて
知的な瞳を揶揄う様に飛ぶ 低い空を
のたりと
まだら模様 広がる染み
アルコールなんかじゃ上澄みしか流せないね
残された不純な感傷
ありふれた恋ならいいのにな
多情多感な私たちの
嘘みたいなシノプシス
肺の奥に仕舞うため息
色の名前さえも通じ合えない
冷たく重たいガラスケースに
綺麗なピンで突き刺して
それはきっと誰よりも
いちばん近い場所
鱗粉もいずれ散るなら
いちばん良い姿で
ああ いっそ
ありふれた恋ならいいのにな
多情多感な私たちの
嘘みたいなシノプシス
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