赤いマニキュア

マニキュアの匂いが
嫌(い)やだと言ったあの人
それなのに爪を 紅く染めた私は
バカな女さ
色づいた 私の
指先を悲しくみつめ
それっきりどこか遠く消えたあの人
恋の終りさ
あゝ船の汽笛がきこえる夜は
マニキュアの乾きがわるい

酒もタバコも 止められたのに
女心にしみついた
赤い 赤い 赤いマニキュアよ
彼を返して

マニキュアの匂いは
悲しみの匂いに 似てる
泣きながら爪を 紅く染める私は
バカな女さ
幸せじゃないから 思い出にひたっているだけ
抱(だ)きあった夜は 丁度(ちょうど)指の数だけ
忘れやしない
あゝ船の汽笛がきこえる夜は
マニキュアの乾きがわるい

泣けば涙がひとつぶ落ちて
ぬれてにじんで ぬりなおす
赤い 赤い 赤いマニキュアよ
彼を返して
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