紀伊水道

結城つむぎの 袖振るたびに
匂い袋の 鈴が泣く
船を 船を見送る 紀伊水道
こんなか細い 未練の糸が
なんで切れない おんな指

馴れぬ手付きで 解(ほど)いて呉れた
酔った昨夜(ゆうべ)の 名古屋帯
宿の 宿の窓には 紀伊水道
後を引くから 許さぬはずが
肌は心に すぐ背(そむ)く

背伸びするたび 爪先痛い
辛さ分かるか 鼻緒まで
船が 船が消えてく 紀伊水道
みさき灯台 点(とも)しておくれ
女ごころに 夢あかり
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