ゆううつな熱帯魚

何色にでもかわれる背中を
蛍光灯の光がただ照らす
「まったくイヤんなっちゃうわ」
あの子がもらしたグチにそっとうなずいて。
物足りないドライフードランチは
今日の次が明日だって事を示す

ゆううつな熱帯魚の様に
水面をゆらゆらゆれる
あなたは今どこにいるの?
誰のために笑っているの?

大きすぎる時計をはめて
ちょっと背伸びして買ったブーツをはいて
最近覚えたブレンダ・リーを
軽快に口ずさんで
待ち合わせのカフェに急ぐ
時計はめずらしく 10分前

いつだって一番いいとこで
目がさめて消えてしまう
気がつけば冷たい水の中で
ゆらゆらゆれている

願い事込めて歌にのせるよ
やわらかいメロディーかなでて
遠い遠い距離を越えて届けるよ
愛しいあなたのもとへ

気まぐれな指先はいつも
左肩を通り越して
冷たい水槽の中に
多すぎるドライフードを入れる
ゆううつな熱帯魚は
また夢をみて
ゆらゆらゆれる。
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