クライベイベ

大事な物は ひとつだけ それを大事に持っていた
馬鹿にされた分だけ 馬鹿に仕返してやった

本当に大事な物だったら 簡単に見せるべきじゃない
そうやって 皆を 遠ざけて 暗い場所に隠れた

だけど ずっと ずっと 泣いていた
届かないのに 泣いていた
遠ざけたのに 泣いていた
震えた声で

これさえありゃいいんだ なんて 嘘みたいで怖くなる
あんなに大事にしていたのに 嘘みたいに捨てていた
どんな天秤に掛ければ ちゃんと答えになるんだろう
暗い場所に隠した 宝物を無くした

「大事な物は ひとつだけ」手放せずに持っていた
馬鹿にされた分だけ 媚を売って回った

本当に大事な物だったら 遠い過去に忘れた
今じゃあの宝物は 必要ないと勇んでいた

だけど ずっと ずっと 泣いていた
置いてきたから 探していた
見付けられずに 泣いていた
何が大事だろう

これだけでもいいんだ なんて 嘘をついても 仕方がない
どれだけ恥を掻いたって 宝物が忘れられない
暗い場所を 探した 心の底に 飛び込んだ
見付けられずに溺れた 自分の底で 溺れた

これさえありゃいいんだ なんて 嘘みたいで 怖くなる
これだけ大事にしているから それでいいと 頷いて

幾つもあっていいさ だって どれも大事にしてるでしょう
「これだけ」でもいいんだ どんな物だっていいんだ

それを どんな天秤に掛けても ちゃんと答えになるだろう
それでいいと 思えるなら 宝物になるだろう
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