DOORS

古い左手の腕時計が
午後9時になろうとしてた
渋谷あたりはいつものように
人の煩悩であふれて

交差点の信号の色が
青に染まりだしていた
人はみな足早に過ぎるのに
どうやら踏みだせない

一度は閉ざして
鍵かけた うなる衝撃が
向かい風にのって
懐かしいにおい 思い出させている

今夜だけは君との幸せ
続けばいいのにと願う
指の間からすり抜けないように
壊れないように
深くもぐり 心からめて
君はかなしげににらみ
もうすぐ夜の扉がしまる

古い左手の腕時計は
過去の自分に飽きだして
またたく間に素敵な音楽を
流すラジオになって

右足のつま先
これからの行方確かめてる
追い風にとびのり
ゾクゾクすること そっとつかまえたい

まだ知らない出会いを感じて
走り続けたいと願う
指の間からすり抜けないように
消えないように
深くもぐり 心うるおい
君は背をむけて笑い
わたしはどの扉をあける?
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