静かな雨

眠くなるようなはやさで
水玉を蹴散らしてく
揺れるワイパーを見ながら
遅刻のいい理由考える

憂うつな朝の渋滞の中で
横にならんだTAXI
後ろにひとり
座っているのは
君によく似た人

静かな雨に声も出せず
胸だけが高鳴り
くもったガラスを
手のひらで拭いて
横顔を見ていた

何十mか先の方
誰かが事故おこしてる
僕も君に似た人も
ナメクジみたいに
進んでゆく

遠くにそびえる
真新しいbuilding
かすんでる最上階
あの頃あんなの
なかったなんて
心で話してる

静かな雨に閉じ込められ
甘い妄想にひたる
ほんの数分間の
ランデブーが終わってく
なこり惜しそうに

窓を開けて目で
追いかけても
そこには誰もいない
うすく光の漏れる
空を見上げ
交差点を曲がる

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