土蜘蛛忌譚

其の身を光刺さぬ闇に葬り 只静かに刻を待つ
爛れた 其の面の皮の奥では 深い劣情が燃える
寒し熱し 痛し痒し 声も出せぬ
孤独な土の中は 臍噬む努の欠片
冷たい土を食みて 繋いだ明日の戸片

仄見ゆ公方に順う安寧 振り払いて徳と為す
縮れた見るに耐えぬ 下卑た躰 忌むべき心を映す
饑るいだけ ひもじいだけ 吐息青く
孤独な土の中にゃ 届かぬ夢の欠片
冷たい土を食みて 繋いだ明日の戸片
朽ちてゆく誇りさえ 滔滔と時間は流れて
沸き上がる其の焦燥から 己が住処を求め惑う

毛むくじゃらの脚が 醜い脚が
しなしなと震えて 躙り寄って来る

丸々と膨れた ぶよぶよの腹
孕み子が餓えて 人を喰ろうたか

土 (地蜘蛛 穴蜘蛛) 蜘蛛 (袋 腹切り)
忌む (侍 ねぬけ) 唄 (ずぼずぼ 勘平 嫌だ 厭じゃ)

哀し虚し 憎し悔し 何も見えぬ
孤独な土の中は 臍噬む努の欠片
冷たい土を食みて 繋いだ明日の戸片
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