交換日記

埃をかぶり 少し色褪せた 日記を開いてみる
父と母の 交換日記さ
ベッドの上で 母はこれを 一体どんな気持ちで
書いていたのかな 残された時間と まっすぐ 向き合いながら

1ページ毎に刻まれた やり場のない 悔しさや痛み
それは優しい笑顔の裏に隠されていた 闘いの日々

「いつか私が 助けてあげることができなくなる」
綴られた 僕への想い
「冬」という漢字 分からなくて 助けを求める僕に
あえて答えを教えなかった もちろん 今は書けるよ

「私の命は灯火です どこへでも飛んでいけるのなら
家路急ぐ 我が子の足元を照らしてあげたい」
一枚の古い写真の中 僕を見守る母の姿
何気ない家族の時間が 僕にもあったことが 分かった

背は伸びて あなたより高くなったけど
心のすみっこに 子供のまま残っている
空白が あなたの残した言葉で埋まってゆく

抱きしめることも 触れることも 話すこともできないけど
確かに今も感じている その愛情を
ありがとう 僕はこの先も 前を向いて歩いていく
暗い足元を その灯火が 照らし続けていてくれるから
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