家族

どこに行くのかわからぬまま どこに行こうか決めたりして
僕達は流れ流れ 移ろう事に気づかないで

明かりの灯るうちへ帰る ドアを開ければテレビの音
そっと降ろした肩の荷物 今日のご飯は焼き魚かな?

猫が背伸びする 犬があくびする 不器用なパパ 口うるさいママ
そんな日々はいつか遠い過去の思い出になる

口争えば部屋にこもり 寝て起きれば普段どおり
僕達の愛は理屈を 軽く飛び越え ただ引き受ける

食パンの焼ける香りの中 少しかすれた「おはよう」の声
マグカップ発 恒例行事 ホットミルクで口火傷して

パンクした自転車 錆び付いたスポーク 不機嫌な爺や 編み物する婆や
そんな日々はいつか遠い過去の思い出になる

時は止まる事知らない 過去は取り戻せない
ここにいる意味知らない また今日も…

蝉時雨がただ聞こえる 二の腕についた畳の跡
冬のストーブ 湯気を吐いて 踊るやかんのカタカタステップ

軒先で恋した つばめが巣作り 帰らない兄さん 着替えてる姉さん
そんな…

どこに行くのかわからぬまま どこに行こうか決めたりして
窓から覗く町の顔は 夜をまともに迎え入れる

「おかえりなさい」や 「おやすみなさい」を 覚えた弟 まだつたない妹
そんな日々はいつか遠い過去の思い出になる
それがいつか僕の強い“らしさ”に変わる
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