246

帰りを急ぐタクシーたちが
ふたりの前を通り過ぎてく
まだすこし雨が残る
真夜中の246

君は僕の袖をつかんで
もう歩こうよって言ったね
纏わりつく夏の風も
悪くはない夜だ

なにもない いまはない
心配なことや
寂しいこととか
悩み事だとか

だけどね なぜだろう
心の奥底に
正体がわからない
怪物がいる気がして

かけがえのない
この安らぎが
呑み込まれそうで

『疲れた?』『大丈夫』
何気ない会話のなか
気持ちを感じ取ろうと
してるこの空気が

嫌いじゃないんだ
むしろ僕は好きなんだ
心の奥底に
怪物なんていないって

確かめることが
やっと出来るんだよ

『ねぇ もうお家まで 歩こう』

帰りを急ぐタクシーたちが
ふたりの背中 追い越してく
まだすこし雨が残る
真夜中の246
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