京都去りがたし

比叡(ひえい)おろしの吹く夕暮れは
仕方ないほど あゝ淋しくて
ヒュルル ヒュルルと背中で泣いて
哀しい人のささやきになる

貧(まず)しい女やから
あなた待つしかよう知らん
京都 京都 あゝゝ去りがたし

祇園祭の宵山(よいやま)の夜
切ない鉦(かね)を素肌で聞いた
涙集めた時の川面(かわも)を
浴衣(ゆかた)の帯が流されてゆく

淋しい女やから
憎むことなどようできん
京都 京都 あゝゝ去りがたし

心変りがないでもないと
さんねん坂の部屋で待ちます
ヒュルル ヒュルルと凍(こご)えた風が
春の遠さを告げて哀しい

貧しい女やから
思い出だけで温かい
京都 京都 あゝゝ去りがたし
×