旅立つ彼女と古い背表紙

めくるページの中 聴こえる 枝擦れ
段落の狭間で 私の翼は
光る風を連れて そう羽ばたくの 時の壁を越え

山鳴り 湖 揺れる楓
城壁 潮騒 眠るツグミ

ああ パレットに虹のひとしずくを
北極星にイーゼルを立て掛けて

朝霧 帆船 煉瓦の街
野うさぎ スズラン クジラの歌

ああ 掌くすぐる月のかけら
そう 星座の花びら笑う 耳元で

めくるページの中 聴こえる 枝擦れ
段落の狭間で 私の翼は
光る風を連れて そう羽ばたくの 時の壁を越えて

ああ 窓の外に夜が緩む
閉じたカーテンの隙間に ほら 日が射した

手に馴染む重さと 栞の押し花
古い紙の匂い 誘うの 「おいで」と
翼はもういらないの 椅子を立ち 世界の中へと

めくるページの中
段落の狭間で 私の翼は
光る風を連れて そう羽ばたくの 時の壁を越えて
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