10クローネとパン

10クローネばかり
貸してくれよ
来月には
返すから
雨が止んだら
仕事もある
僕を信じて

街の外れに建ってた
古い見世物小屋
なぜだか
華やかに見えてたんだ
集まった大人のせいかな

テントから潜り込んで
リハーサルを覗いてた
とんがった靴履いた
司会者のJokeは笑えない

AH-
だけど
目の前には
眩(まばゆ)い電飾が
溢れて
僕の知らない世界へ
連れて行ってくれたよ

WORLD
10クローネ出せば
パンが買える
ワインだって
手に入る
それより僕は
夢が欲しい
ウキウキさせる
音楽とか
辺りでは
見たことない
奇抜な衣装を…

あの人は仕事もせず
昼間から酒飲み
管(くだ)巻いて
「この世は闇なんだ」と
死んだ目でつぶやく
安っぽい絶望さ
死ねばいい

僕の母親は
ダンサーだったらしい
愛人の道化師と
竹馬を履いて逃げて行ったって…

AH-
ある日
僕の家の
笑いやしあわせが
消えたよ
愛に触れたこともなく
愛の意味も知らなかった

WORLD
10クローネ出せば
パンが買える
ワインだって
手に入る
それより僕は
チケットが欲しい
こっそり脇から
入るんじゃなく
正式に
入り口から
未来に向かおうか

呼吸をする度
白い息
それは僕自身
まるで
一つの宇宙が現れて
神の掌(てのひら)の上

いくばくかの金なんか
意味はないんだ
生きる価値を探せ
パンやワインなんかより
大切なもの
アイデンティティを思い出せ

そう僕は目を閉じて
走ってる

WORLD
10クローネ出せば
パンが買える
ワインだって
手に入る
それより僕は
夢が欲しい
ウキウキさせる
音楽とか
辺りでは
見たことない
奇抜な衣装を…

正式に
入り口から
未来に向かおうか
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