妻恋道中

好いた女房に 三下り半を
投げて長どす 永の旅
怨むまいぞえ 俺らのことは
またの浮世で 逢うまでは

「お菊……堪忍してくれ、嫌で別れた仲じゃねぇ……
これも渡世の義理故だ。泣けるおめえーの辛さより、
泣けぬ俺らの胸の内割って見せてやりてえ……」

惚れていながら 惚れないそぶり
それがやくざの 恋とやら
二度と添うまい 街道がらす
阿呆阿呆で 旅ぐらし

「泣くもんけえ、たとえ妻恋鳥が鳴こうとも」

泣いてなるかと 心に誓や
誓う矢先に またほろり
馬鹿を承知の 俺等の胸を
何故に泣かすか 今朝の風
×