一本刀土俵入り

「あの姐(あね)さん。お蔦さんといいなすったが、
すんでの事に死ぬところ、取的さんしっかりおしと
泣いて救けて下すった。なのにこの駒形茂兵衛は、面目ねえ」

角力名乗りを やくざに代えて
今じゃ抱寝の 一本刀
利根の川風 まともに吹けば
人の情を 人の情を 思い出す

「今でもはっきり覚えている。水戸街道は取手の宿の我孫子屋で、
立派な横綱におなりよと、紐に結んで二階から、
櫛かんざしに巾着ぐるみお情けをいただいた、あの時の取的でござんすよ」

忘れられよか 十年前を
胸にきざんだ あのあねさんを
惚れた はれたと 言うてはすまぬ
義理が負目の 義理が負目の 旅合羽

「姐さんッ。堪忍しておくんなさい。おはづかしゅうはござんすが」

見せてあげたい 男の夢も
いつか崩れた 一本刀
悪い奴なら おさえて投げて
行くが俺らの 行くが俺らの 土俵入
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