小さな小さな山茶花を

きびしい風が 吹き抜ける
団地の窓に 山茶花を
小さな小さな 山茶花を
遠くの駅に 住んでいる
やさしい人の 家までも
香りがきっと 届くよう

冷たい壁に かこまれた
団地の窓に ハミングを
小さな小さな ハミングを
お便りひとつ 待ちながら
逢えないまゝで 過しても
淋しさなどに 負けぬよう

涯ない空が あるだけの
団地の窓に ともし灯を
小さな小さな ともし灯を
夜なべの指は 痛むけど
この靴下を 渡す日に
願いがきっと 叶うよう
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