オーロラは毛穴が開いてるだけじゃなかった

深い夜空に滔々(とうとう)と流れる光の帯
人々はその届かない煌めきに憧れてた
でもその実態は未だ誰も掴めずにいて
空に赴いて一雫小瓶に詰めた

あの輝きは営業用だったのか
間近だと腐ったゴムみたいな色で
弥生土器の方がまだ光沢がある
恐る恐る顕微鏡を覗く

切り取った破片の全面に
開いた毛穴のようなくぼみ
オーロラは天にウヨウヨ沸く
40代の皮膚だった
黒ずんだ毛穴は上空で
冷やされて閉じていた
産毛が光を乱反射し
カラフルに見えるのだ

性質は判明したが発生理由がわからない
物理法則をシカトしてでも現れるのだ
夢を壊された人類はこのままではいられない
オーロラのスキンケアが計画された

洗顔料、化粧水に乳液
塗りたくればもっと輝くだろう
ポテチを食べた後のリモコンみたいな
ヌルついた肌触りだ

拭き取った汚れはよく見たら
ビールで濡れたクシャクシャの馬券
オーロラは天に昇らない日
競馬場で飲んでいる
140円だけ勝っている
馬券は綺麗な状態だった
ギリギリの暮らしだと窺える
ビールで赤字だろうが

神々しかったオーロラが
地球のバグ呼ばわり
これ以上は落胆するだけと
調査を止める案も出たが

千回くらい逃げようとして
千回とも逃げられなかった
オーロラは綺麗だ

汚れを落とした下に
赤面するクオリティーの壁画
意味ありげだが何も言えてない
かわいそうなポエム付き
誰かの黒歴史を投影する(さらす)
特殊機能付きの肌らしく
岐阜の佐藤が昔ノートに
描いたものと一致した

佐藤はおいおい泣いた
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