幻 舷之介

おはよう あなた 舷之介
あたいの命を 半分あげて
もっと生きてて 欲しかった
男 荒波舷之介
あなたの形見の ギターをひけば
夜明けの海の 向うから
きこえてくるの あの日の歌が
あたいを泣かせた 別れの歌が

呼んでよ あなた 舷之介
鎖を放して 出てきんしゃいと
いつもあたいを 笑ってた
男 荒波舷之介
あなたを愛せる 独身(ひとり)になって
たずねた北の 港町
もう遅いのね わかっていても
聞こえてくるのは 潮鳴りばかり

さよなら あなた 舷之介
あたいに残した 手紙の続き
もっと続けて 欲しかった
男 幻 舷之介
おまえによく似た 子供を産めと
やさしい文字を よみ返す
一間の部屋に 秋風吹いて
ひとりの夜明けが 身にしみまする
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