紅の蝋涙

突き刺さる炎の矢は引き抜かれ
乾いた身体へと血が巡る

窓へと積もる雪 遠ざかる春の夜
音無き白い世界を血が染め
炎に包まれし赤子は目を開く
未来を見据えるような眼差し

生まれながらにぬくもりを知らない私が
人の心を知る必要がどこにあるのか

母の呟きが谺している
太陽と引き換えに得た永遠
不死なる我らが安息の日を
望めど虚しき灯火かな

もしも私が光の下生まれていたら
どんな風に人を愛し心を震わせたのだろう
少しだけでもそんな想い出があったなら
私だって強がらずに泣くこともできたのに

生まれる理由 すべては誰にも選べない
けれど私はこの世で生きることを選んだ

母は朧げな記憶の中
私は答えを聞けずにいる
幾度となく呼びかけてもただ
無言の悲しき姿が在った

もしも私が光の下生まれていたら
どんな風に人を愛し心を震わせたのだろう
少しだけでもそんな想い出があったなら
私だって強がらずに泣くこともできたのに

私にはまだあなたが必要だったけれど
もう逢えない そう思えば想うほどに恋しい
なぜ永遠じゃないの?

消えども火在りし故にまた燃ゆ
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