北のとまり木

とまり木づたいに 女は来たという
ボストンバッグに 過去(むかし)を詰めこんで
冬の終わりの 港町
薄いコートじゃ 寒かろに
どこか寂しい 横顔みせて
あおる火の酒 北のとまり木

おんなじ匂いの 似た者同士だと
慣れない手つきで チロリの酒を酌(つ)ぐ
泣いているよな すきま風
不幸つづきの 細い肩
そっと隠した 指環のあとが
やけにせつない 北のとまり木

凍てつくガラスの 窓には暗い海
轟(とどろ)く海鳴り 夢さえ遠ざかる
桜舞い散る 季節まで
ここにいたいと 微笑(わら)う女(ひと)
俺のこころに ランプのように
揺れる恋灯(ともしび) 北のとまり木
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