坂の上の二階

坂の上の二階 そんな名前の店
坂を登りつめて ぼくはいつものように
風に追われて 階段を上がる
坂の通り見おろせる 窓ぎわの席
いつも空いている 向かいの椅子に
きみの想い出が 今日もただよう
フランシス・レイのストリングスが
波のように寄せて 寄せては返す
甘い想い出を ゆらす……
坂道をころげ落ちる
テニスボールのように
はずみながら きみは去った

坂の上の二階…… そんな名前の店
レジの電話見つめながら かけてみようかと迷う
淡い夕日が さし込むお店
時計をチラチラ 人待ち顔で
ひとりすするコーヒー からっぽの心に
にがさだけが しみてゆく
フランシス・レイのストリングスが
波のように寄せて 寄せては返す
甘い想い出を ゆらす……
クツクツ煮えたぎる
サイフォンの音に
にがい想い出が ゆれる ゆれる
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