象と人と蟻と…

百獣は森を追われてゆく
人は奪い与えはしない
火の手は森を焼き尽くし
息を吹き返す間もなく消え去った

生命の環(わ)にて
種子は森となる

逆類(げきるい)に因りて
流麗は途切れた

偉大なる賢王は人に勝るという
瑣末(さまつ)なる人間は蟻に勝るという
極微(ごくび)なる軍勢は象に勝るという
互いは動くに動けぬ三竦(さんすく)み

百獣は森を追われてゆく
人は奪い与えはしない
火の手は森を焼き尽くし
息を吹き返す間もなく消え去った

怒れる巨躯は猛者と化し
銃を手にする者は撃つ
武器を無くして塚に立ち
無数の牙は返り討つ
繰り返される災いは
根絶やすまでは終らない
狂い生じてまた狂う
それでも人は繰り返す
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