送電線

どこまでも真っ直ぐに 行けたなら素敵だね
ほら まるで あの送電線
男ものの Tシャツ 洗濯に混ぜて干す
母 私 二人の暮らし

好きなあの人と 暮らしてみたいと
卒業式の 夜にぽつり

とても優しく とてもゆっくり とてもすまなそうに
話し始めた 一言づつ 言葉選び
涙拭いたら ありがとうって 言わせてください
お嫁に行くみたい 私より先に

何よりも私だった いつだって二人だった
そう 全部 後回しだった
明け方の台所 溜息をついていた
もう 決めた 事があるのね

変わる私と 変わらないあなた
神様は何故 不公平なの

何も言わずに 抱きしめてよ 少しの間だけ
取り戻せない 歳月には 負けるけれど
間に合うならば おめでとうって 言わせてください
幸せになってね 私より先に

とても優しく とてもゆっくり とてもすまなそうに
話し続けた 思いの丈 止まらないで
とても愛しく とても無垢な とても女らしい
横顔眺めてた

あの日あなたは 歩きだした 送電線の下
枯れた田んぼを 真っ直ぐ進む 道など無いけど
振り返らずに 心のまま ひとつだけ我が儘
忘れるもんですか あなたの背中を
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