孤立無援の唄

ネェ何か
おもしろいことないかなァ
貸本屋の
のき下で雨やどリ
君は
むずかしい顔して
立読みしながら
本を盗んだ
ぼくの
自転車の
うしろで
孤立無援の思想を読んだ

春になったら
就職するかなァ
壁に向って 逆立して
笑った
机の上の
高橋和己は
おこった顔して
さかさに見える
どうして
生きていいのか
わからぬ ふたりが
畳の上に ねそべっている

ネェ何か
アルバイトないかなァ
君はモノクロ
テレビのプロレス見てる
ふたりはいつも
負け役みたい
でんぐリ返って
地獄がためだネ
窓ガラス
あけると
無難にやれと
世の中が 顔をしかめてる

ネェどうにか
やってゆけるかなァ
タッグマッチの
君が いないから
ぼくは
空を飛べない
年老いた
スーパーマンみたい
どうして
生きていいのか
解らぬぼくが
畳の上に ねそべっている

「語り」
葉書き ありかどう
君といた時間が
長過ぎだのかもしれません
ぼくは もう少し
こうしていたい気持です
新しい背広を着た
真面目な君を見るのは
少し恐い気もしてます
でも 近いうちに
君に逢いたいと思います
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