母娘十年

初めて母に 逆らいました
夢を支えに 生きると決めて
親の役目は ここまでと
ホームの影(かげ)で 佇(たたず)む母が
瞼(まぶた)から 離れない
あれから十年 ちぎれ雲

ときおり届く 荷物の中は
北の匂いの 泥(どろ)つき野菜
風邪を引くなと 添えてある
やさしい文字に 心が揺れる
今はまだ 会えないの
母親ゆずりの いじっぱり

右手を母に 引かれて歩く
お宮参(みやまい)りの 古びた写真
まわり道した 親孝行
ごめんねずっと 淋(さみ)しくさせて
会わせたい 男(ひと)がいる
素直な私で 帰ります
×