仁侠吉良港

雨にあじさい 風にはすすき
俺にゃ似合いの 裏街道
赤い夕映え この胸に
抱いてやりたい 花一輪
合わす両手に ほろりと涙
お菊 十八
お菊 十八… 恋女房

「後にも先にも 惚れた女はただ一人…
お菊 お前だけだ… 嫌いになった訳じゃねぇー
男には仁義のために命を掛けなきゃーならねえ時があるんだぁ
なんにも言わずに この離縁状を受け取ってくれ…
なぁー お菊…」

なるになれねぇ 渡世じゃないか
意地と情けの 板ばさみ
別れ盃 交わす夜は
そっと心で 詫びている
行かにゃならない 荒神山へ
男 涙の
男 涙の… 離縁状

「明日の命も判らねぇのが この渡世…
安濃徳のあこぎなやり方を 許す訳にゃーいかねぇんだ
三途の川の川端で 男同士の約束を 守り通すも義理のため…
分かってくれ… お菊…」

惚れたお菊に 背中を向けて
野菊片手に 散り急ぐ
夫婦暮らしも 束の間の
たった三月の 恋女房
義理を通した 白刃の舞に
波もざわめく
波もざわめく… 吉良港
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