名もなき花の向こうに(仮)

逆にこんなこと言っても信じないかもしれないけれど
例えば世界はもう終わっているんだよ
それどころかまだ始まっていないのかもしれない
全てはもう言葉の問題でしかないんだよ

十二月の冷たい雨に降られて悴んだ両手を口元に翳し
「今年ももう終わっていくのですね」なんて空々しく君が呟く

疲れきった体を壁に擡げて一つずつ一つずつカーテンの柄を数えてる
目を閉じると雨に濡れたアスファルトの道を走るSUZUKIの音が聞こえてくる

いつだって僕は壊れそうなものばかり集めて
本当の気持ち消し去っていった
今日だってそうさ 何も知らないようなフリして
宿り木にぶらりぶら下がってる

もうラブソングは二度と書かないって決めたから
しばらく君とも連絡を取っていないよ
愛した人とさえも幸せを掴めない僕に
明日を夢む元気などないんだよ

こうやって僕は傷ついたことにかまけて
遠くにいる誰かを見下ろしているんだ
今だってほら夜と朝がすれ違う時間に
できもしないことばかり考えている

今君は僕の知らない世界で
僕の知らない気持ちと向き合っているんだろう
君の幸せが風の便りによって届いたら
小説にでもしようかなと窺っている

時が過ぎてみんな老いさらばえてしまったら
この町の景色はどうなっているんだろう
風に揺れる名もなき花の向こうに
あんなにも凡庸な空が広がっている

風に揺れる名もなき花の向こうに
あんなにも凡庸な空が広がっている
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