ユーカリ

東の光を受けて 誰かが淡く手を振る
群れをなして飛び交うハトを 数えかけたホーム
見なれた七号車に 揺られる無言の命
ささやかな時の中で 満ち欠けを続ける

読み終えた小説に 描かれた街が
あまりにも美し過ぎて 目を上げるのも怖かったんだ

疲れた言葉は伏せて 俯き改札を抜ける

何かを求める日々が 誰かを傷付けてゆく
高架下をくぐり抜ける 振り向くこともなく

流れ去る電線に指を走らせて
途切れた先に見えていた あの町を今歩いている

答えは風に託して 俯き駅前を過ぎる

空回る日常に紡いだ思いが
少しでも染み渡ればと 調べに乗せて…
窓際のユーカリは光を集めて
片付かない部屋の隅を 今もほのかに照らしている

開けた明るい空を 見上げて坂道を下る
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