長門峡

春まだ寒い 長門峡よ
降り立つ風の 無人駅
清く流れる 川瀬淵
不器用ゆえに 一つ道
ほかの道では 生きられないと
俺は誓って ここに立つ

独りが似合う 長門峡よ
魅かれるように 俺はゆく
遠い山から 日は落ちて
「少しは楽に なれたかい…」
そっと呼ばれて ふり向く先に
白い一羽の 鳥が舞う

男の姿 長門峡よ
いついつまでも 去りかねる
北へ渡れば 萩の町
旅路は心 無垢(じゅん)にする
明日は帰ろか 待つひとのもと
俺はしずかに ここを発つ
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