夕陽の丘

夕陽の丘の ふもと行く
バスの車掌の 襟ぼくろ
わかれた人に 生き写し
なごりが辛い たびごころ

かえらぬ人の 面影を
遠い他国で 忘れたさ
いくつか越えた 北の町
目頭うるむ たびごころ

真菰(まこも)の葦は 風にゆれ
落葉くるくる 水に舞う
この世の秋の あわれさを
しみじみ胸に バスは行く

夕陽の丘を 見上げても
湖(うみ)の畔りを 訪ねても
かいなき命 あるかぎり
こころの傷は また疼く

人の子ゆえに 恋ゆえに
落ちる夕陽が 瞳(め)にいたい
さよなら丘の たそがれよ
また呼ぶ秋は ないものを
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