織部のちゃわん~あの頃に~

十年勤めた 会社を辞めて
いま引越しの 最中(さなか)です
最後に残った ダンボール
二人の写真 ポロリと落ちた
覚えてますか 古いアパート
いつか大きな お家に住もう
指切りをして 笑う姿が
いまは切ない 想い出ですね
帰りたい 帰れない あの頃に

十年通った 駅までの道
肩を並べて 歩いたね
ふたり暮らした 年月(としつき)の
想い出だけは 消えたりしない
覚えてますか あの日揃えた
あなたの好きな 織部(おりべ)の茶碗
そっと包んで 抱きしめましょう
ひとつ欠けても 捨てられなくて
帰りたい 帰れない あの頃に

覚えてますか 小さな窓で
二人並んで 眺めた富士は
ビルの狭間(はざま)で 見えなくなった
悲しいですね 都会の空は
帰りたい 帰れない あの頃に
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