雪の日に

小さな 駒鳥 息絶えて
蟋蟀 柊 暗い森
そうして 朝陽は昇り
再び 冬が来る

あれは 初めて 雪を見た日
里で 見つけた 赤い果実
味わう事も ないまま
母さんは 撃たれた

どうして どうして すがりついて
叫ぶ 事さえ 出来ないで
逃げて 逃げて 生き抜いて
嘆く 事さえ 出来ないで

悲しみは 癒えない
神様は 見えない
爪痕だけ 残し 消えてゆくだけ
わたしの 手や足に
わたしの 血や骨に
幸せだけ 全て 蘇るまで
生きていたい

瞳 閉じれば 浮かび上がる
団栗 椎の実 冬籠り
秋の実りは 幻
ちらちら 雪が降る

ゆっくり ゆっくり 山を下りて
向かう道 いつか来た道
長い 長い 時をめぐり
響く音 いつか聞いた音

悲しみは 癒えない
神様は 見えない
爪痕だけ 残し 消えてゆくだけ
わたしの 手や足に
わたしの 血や骨に
幸せだけ 全て 蘇るまで
生きていたい

せめて わたしの 亡骸を
山へ 帰して くれないか
そして あの日の 赤い果実
傍らに 埋めて くれないか
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